「AIにとって代わられる」はもう辞めません?

「学校司書の配置と促進と専任化など学校図書館のさらなる拡充」を盛り込んだ、2020年学校図書館年に関する国会決議に、日本維新の会が反対を表明した。

詳しい話は記事下部のリンク先に行ってほしい。

 

ともかく、その理由がかなり笑えるものである。

反対理由の一部を抜粋しよう。

 

日本維新の会は、国語能力を伸ばすために学校図書館が重要であると認めながらも、

...公立学校の図書館であれば、やみくもに公務員の数を増やすことにつながりかねないと考えるからです。また図書館の司書は近い将来、AIにとって代わられる業務と予想されます。たとえ過渡的措置としても。司書の配置を促進すれば、図書館の機能が充実化され、子供たちへの国語教育に大きく寄与するという発想が短絡的であり、時代にそぐわないものであると考えます。 人員を増強すれば、教育の質が向上するというものではありません。我が党は真に子供たちの国語教育の強化に資する、学校図書館の抜本的改革を追及してまいります。

という理由から、司書の増員に賛同しかねないとした。(太字は筆者によるもの)

 

つまり、維新の主張するところを少し乱暴に言い直せば、

「もし司書を増やしたら、将来AIに仕事を奪われたときに邪魔になる。なんなら、司書を増やそうが国語教育の質には直接関係はない」

ということなのである。

 

でたな、AI。

僕もつい最近まで就活生だったから分かる。色々な企業の人事が、就活生が、就活サイトが、口を揃えて「AIを利用した新しい時代の〜」とか、「これからはAIに関連した~」とかを枕詞のように使っていた。

その波が政党にまで来ていたのか......

 

「AI」という概念が一般に出回り始めた当初、AIはさも何でも解決してくれる魔法のランプかのように扱われてきた。

だが、実際はそんな万能ではないらしいということに、みんな気付き始めた今日この頃である。

どうやら、AIでできることは現状ごく限られているし、その限られた作業において人間みたいな処理能力を実現するだけでも、途方もない労力がかかるらしい。

「シンギュラリティ」が来て、人間を超越したAIができ、ターミネーターやアイ・ロボットの世界が来るのは、(残念ながら)思いのほか遠いみたいだ。

 

ただ、僕のようなITにすっからかんの人間からすると、「AI」というワードの効果は未だに絶大だ。

何か凄そうだし、何か時代を変えてくれそうな気がする。

僕も一時期AIに憧れて、何冊か本を読んだり、NHKの「AIってなんだ?」を観たりしてみた。

そして、残念ながら想像してたのとは随分違うことが分かって違う分野を目指すこととなった。

 

「AIは魔法のランプ」という言説は、今世界中で蔓延している一種の「病気」だと僕は思っている。

現実的な案を封殺してしまう、集団ヒステリーみたいだ。

 

維新の会に聞きたい。司書の仕事が「AIにとって代わられる」のは、いつ来るのか。

明日、明後日でもなければ、一年後でもないだろう。多分、10年以上かかるんじゃないのか。

あのAmazonでさえ今も倉庫業務に大量の人員を投入してるのに、小さい学校図書館業務をAI(と多分ロボット)に任せるってどんな技術力なのか。

小学校低学年が扱えるUIを搭載した全自動貸出返却システムでも作る?

 

百歩譲ってその「AI」をどこかの企業か研究機関が開発したとしよう。

それ、買うのにいくらかかるの?

その「AI」もタダじゃないんですよ。ワードやエクセルとは何桁も違うんですよ。機械なら導入費も維持費も毎年掛かりますよ。

 

あれ......? そのお金で司書雇えませんか?

 

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ITに詳しくない人の「AIが〜」は、「神様に頼めば〜」くらい根拠のない戯言である。

で、多分、政治家の中でITに詳しい人はほとんどいない。だって、USBを知らない人がサイバーセキュリティ担当大臣になれる国だもの。

維新の会の反対表明を書いた人は、ITの何を知ってる人なの?

 

居酒屋で「AIの時代が来たら〜」って盛り上がるのはいい。自動化された未来に夢をはせるのもいい。

でも、今目の前にある現実的な物事を決めるとき、未来の「AI」を根拠にするのはただの責任放棄だ。

せめて、その「AI」が出来てから言ってくれ。

人が足りないなら人員を増やそうとしろ。そこはケチらないでほしい。

今困っている人がいるんだから、今ある手段で今解決しようとしてくれ。

 

ITによる効率化は結構だが、人間がやった方が効率がいい仕事は世の中にまだまだ沢山あるし、ドラえもんみたいなロボットでも開発されない限り、当分はなくならない。

学校司書の仕事は非常に多岐にわたり、何より子供相手の仕事である。AIに任せるのにはまだまだまだまだ心もとない。

当分の間は、人という汎用性抜群の労働力に金を注ぎ込んだ方が、よっぽど簡単に結果が出るはずなのだ。

 

学校図書の拡充に、維新の会が反対ならそれで構わない。だが、馬鹿の一つ覚えみたいにエーアイエーアイと言って問題を放り出す前に、もっと現実的な反対理由を述べてほしいのですが、将来AIにとって代わられる予定の政治家の方々、どうでしょうか。

 

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togetter.com

反対意見を載せた元記事は削除されているが、魚拓はここから見ることができる。

【魚拓】2020を学校図書館年とする国会決議案が提出見送りとなりました。 : 瑞穂図書館を考えるblog